企業の皆様の運営上の様々な法律問題について弁護士がサポートいたします。顧問弁護士をお探しなら、ホライズンパートナーズ法律事務所まで
アクセス | 新橋駅 徒歩8分 虎ノ門駅 徒歩3分 内幸町関 徒歩3分 霞ヶ関駅 徒歩4分 虎ノ門ヒルズ駅 徒歩7分 |
---|
受付時間 | 平日 9:30~20:00 |
---|
(掲載日:2017年8月8日)
不当勧誘による取消権を行使した場合の消費者の返還義務の範囲につき、民法703条を適用すれば足りるとの考えから、これまでは、消費者契約法に特段の規定は設けられていませんでした。
しかし、平成29年5月26日に成立した改正民法121条の2において、有償契約が無効・取消しとなった場合の返還義務の範囲について、「原状に復させる義務を負う」と定められているため、消費者が原状回復義務を負うとすると、消費者が受領した商品を費消した後に、契約を取り消した場合にも費用した分の客観的な価値を返還しなければならなくなり、その分の代金を支払ったのと同じ結果になり、不当勧誘行為による「やり得」を認めることになりかねません。
そこで、今回の消費者契約法の改正により、消費者の返還義務の範囲について、「現に利益を受けている限度」とする旨の規定が新設されました
さらに、具体的事例を示して問題点を説明したいと思います。
例えば、消費者が、事業者から1箱1万円のダイエットサプリメントを5箱5万円で購入したところ、2箱(2万円分)を費消した後になって、事業者による勧誘の際に、当該ダイエットサプリメントに含まれる成分の副作用に関する不実告知があったことが判明したことから、消費者が取消権を行使したとします。
このケースで、民法改正案121条の2が適用された場合には、事業者は、消費者に対し、ダイエットサプリメント2箱の客観的価値(2万円)の返還請求権を有することになります。
そして、事業者としては、事業者から消費者に対する返還請求権と消費者が有する代金(5万円)返還請求権とを対当額で相殺することができてしまい、その結果、消費者は、不実告知を理由に当該消費者契約を取り消したにもかかわらず、費消したサプリメント2箱の対価(2万円)を支払ったのと同じ結果となってしまいます。
これでは消費者に、消費者契約法に基づく取消権を認めた趣旨が失われる結果となりかねませんので、このような事態を防ぐべく、改正後の消費者契約法では、不当勧誘による取消権を行使した場合の消費者の返還義務の範囲につき、現に利益を受けている限度とされました。
改正後の消費者契約法によれば、上記の事例の場合において、消費者は現に利益を受けているダイエットサプリメント3箱分を返還すれば足り、費消したダイエットサプリメント2箱の客観的価値(2万円)を返還する必要はないことになります。
■改正民法第121条の2(原状回復の義務)
■改正消費者契約法第6条の2(取消権を行使した消費者の返還義務)
民法第121条の2第1項の規定にかかわらず、消費者契約に基づく債務の履行として給付を受けた消費者は、第4条第1項から第4項までの規定により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消した場合において、給付を受けた当時その意思表示が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、当該消費者契約によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。