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▼第116号 ホライズンメールマガジン
----------最高裁判例速報!定額残業代の有効性は?
2018/08/03
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1.最新トピックオピニオン
2.今週のオススメ
3.近況報告
4.プレゼントのお知らせ
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1.最新トピックオピニオン
去る7月19日、最高裁がいわゆる定額残業代の有効性に関して新たな判断を示した。
今回はこの最高裁判決をご紹介していきたい。
判決全文はこちら
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/883/087883_hanrei.pdf
【事案の概要】
保険調剤薬局の運営を主たる業務とする会社(上告人)で、薬剤師として勤務していた元従業員(被上告人)が、いわゆる残業代の支払を求めた事案である。
1 労働時間数
被上告人は、平成25年1月21日から同26年3月31日までの間、上告人が運営する薬局において、薬剤師として勤務した。
被上告人の1か月当たりの平均所定労働時間は157.3時間であり、15ヶ月の間の時間外労働時間数は次のような分布となっていた。
20時間未満 2回
20時間台 10回
30時間以上 3回
2 賃金体系
被上告人は給与として基本給46万1500円,業務手当10万1000円の支払を毎月受けていた。
この基本給と業務手当について、各書類では次のように記載されていた。
ア 雇用契約書の記載
賃金について「月額562,500円(残業手当含む)」,「給与明細書表示(月額給与461,500円 業務手当101,000円)」と記載
イ 採用条件確認書の記載
「月額給与 461,500」,「業務手当 101,000 みなし時間外手当」,「時間外勤務手当の取り扱い 年収に見込み残業代を含む」,「時間外手当は,みなし残業時間を超えた場合はこの限りではない」と記載
ウ 賃金規程の記載
「業務手当は,一賃金支払い期において時間外労働があったものとみなして,時間手当の代わりとして支給する。」との記載
エ 上告人と被上告人以外の各従業員との間で作成された確認書の記載
業務手当月額として確定金額の記載があり,また,「業務手当は,固定時間外労働賃金(時間外労働30時間分)として毎月支給します。一賃金計算期間における時間外労働がその時間に満たない場合であっても全額支給します。」等の記載があった。
3 労働時間管理体制と給与明細の記載
上告人はタイムカードを用いて従業員の労働時間を管理していたが,タイムカードに打刻されるのは出勤時刻と退勤時刻のみであった。被上告人は,平成25年2月3日以降は,休憩時間に30分間業務に従事していたが,これについてはタイムカードによる管理がされていなかった。
また,上告人が被上告人に交付した毎月の給与支給明細書には,時間外労働時間や時給単価を記載する欄があったが,これらの欄はほぼ全ての月において空欄であった。
【控訴審の判断】
いわゆる定額残業代の支払を法定の時間外手当の全部又は一部の支払とみなすことができるのは,
1)定額残業代を上回る金額の時間外手当が法律上発生した場合にその事実を労働者が認識して直ちに支払を請求することができる仕組み(発生していない場合にはそのことを労働者が認識することができる仕組み)が備わっており
2)これらの仕組みが雇用主により誠実に実行されているほか,
3)基本給と定額残業代の金額のバランスが適切であり,
4)その他法定の時間外手当の不払や長時間労働による健康状態の悪化など労働者の福祉を損なう出来事の温床となる要因がない場合に限られる。
本件では,業務手当が何時間分の時間外手当に当たるのかが被上告人に伝えられておらず,休憩時間中の労働時間を管理し,調査する仕組みがないため上告人が被上告人の時間外労働の合計時間を測定することができないこと等から,業務手当を上回る時間外手当が発生しているか否かを被上告人が認識することができないものであり,業務手当の支払を法定の時間外手当の全部又は一部の支払とみなすことはできない。
【最高裁の判断】
使用者は,労働者に対し,雇用契約に基づき,時間外労働等に対する対価として定額の手当を支払うことにより,同条の割増賃金の全部又は一部を支払うことができる。
そして,雇用契約においてある手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否かは,雇用契約に係る契約書等の記載内容のほか,具体的事案に応じ,使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容,労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断すべきである。
しかし,労働基準法37条や他の労働関係法令が,当該手当の支払によって割増賃金の全部又は一部を支払ったものといえるために,前記のとおり原審が判示するような事情が認められることを必須のものとしているとは解されない。
結論として本件事実関係の下では業務手当は時間外労働に対する対価として支払われたものと認められるから、原審の判断は法解釈を誤っており、違法である。
【ポイント】
今回の判例では、業務手当という名称で支給されている手当が時間外手当の支給として認められるか、という点と、いかなる要件を満たした場合に固定残業代が有効と認められるかが問題となっている。
後者については、テックジャパン事件(最判平成24年3月8日)における櫻井裁判官の補足意見以来、定額残業代の有効要件について、様々な意見が飛び交ってきた。
これまで議論されていた点としては、1未払い分を精算していないしていない場合には定額残業代として無効ではないのか?、2労働者が実際の労働時間数や定額ではない本来の計算の場合の支給額を認識できなければ無効ではないのか?、3 90時間や100時間といった過大な労働時間数を対象とした定額残業代は無効ではないのか?といった点が指摘されていた。
今回の判例では、高裁判決が示していた各種の基準について、割増賃金の支払と認められるために必須の要件ではないと明確に示しており、最高裁としての考え方を明らかにしたものと評価できる。
未払い分の精算がされていなかったとしても既払い分としては弁済として有効となることや労働時間数の明示等の事情は不要であること、基本給と定額残業代のバランスや長時間労働での健康への影響などは有効性に影響しない点が明確になったことの意義は極めて大きい。
また、前者については契約書や労働条件通知書、賃金規程などの記載内容から評価されている点は事実認定として参考になる部分である。基本的には時間外手当の趣旨で支給されたことが必要と言うべきであろう。
なお、判例では、業務手当が時間外手当として支給されたものと認定する理由付けの中で、「1か月当たりの平均所定労働時間(157.3時間)を基に算定すると,約28時間分の時間外労働に対する割増賃金に相当するものであり,被上告人の実際の時間外労働等の状況と大きくかい離するものではない」と指摘している。
かかる記載が、労働時間との乖離がある場合に時間外手当の支給としての効果を否定する可能性があることを含むのかは今後慎重に検討を要するといえるだろう。
※ LEGAL NEWS TOPICS(毎週更新)
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2. 今週のオススメ
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【ホライズンのオススメ! №122】 ピエス・モンテのアップルパイ
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今回は八幡弁護士のオススメ、銀座の洋菓子店ピエスモンテのアップルパイをご紹介しています。住所は銀座ですが、JR新橋駅から徒歩5分ほど。甘さ控えめの美味しいアップルパイです。
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3. 近況報告
1日に社会保険労務士協同組合の主催セミナーで講師を務めてきました!弁護士の高井です。
テーマがハマキョウレックス・長澤運輸事件の最高裁判決とその後の実務対応ということで、大勢の方にご参加いただき、なんと昼夜の2部制、あわせて6時間半話し続けて参りました!
しかもいつもの習慣でずっと立ちっぱなし!最近はなかなか6時間半立っていることもなく、足もバキバキになるような状態でしたがなんとかやり遂げたところです。
しかしこのテーマで話をすることになったときに悩んだのは、そもそも社労士の先生や企業の担当者の方がこの判決文を読んで意味が分かるのだろうか?という点でした。民事訴訟のルールなどがわかっていないと理解できないのでは?という点から掘り起こしてセミナーでも詳しめにご説明をさせていただいたのですが、メール等いただいた方からは参考になった、等のご意見をいただいております。なにかしらかお役に立てていれば良いなぁと思うところです。
あと、先週のメルマガで7周年記念セミナーのレジュメプレゼントをご案内しましたところ、こちらも大勢の方からご連絡いただいております。引き続きプレゼントさせていただきますのでこちらもぜひご利用ください。
というわけで8月になってまた暑い日が続きますが皆様お気を付けて!今後ともよろしくお願いいたします。
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4. プレゼントのお知らせ
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■7周年セミナー「労働法務の最前線」レジュメプレゼント
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先日開催しました弊事務所の7周年記念セミナー「労働法務の最前線」のレジュメをメルマガ登録をいただいている方限定でお送りします!
ご希望の方は、当事務メールアドレスまでタイトルを「7/27レジュメプレゼント」としてお送りください。本文は空メールでも結構ですし、メルマガの感想などひとこといただければより感謝です。お手数ですが、メルマガにご登録いただいているメールアドレスでご応募ください。
【セミナーの内容】
第1部 労働法改正の概要(講師:坂東)
第2部 労働法の視点からみる債権法改正(講師:高井)
第3部 女性が輝く!職場環境創造プロジェクト(講師:荒井)
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