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消費者金融大手のアイフル株式会社、次いでPHS大手の株式会社ウィルコムが、主要取引金融機関に対して債務の返済猶予などを求めるために、「産業活力再生特別措置法所定の特定認証紛争解決手続」(「事業再生ADR手続」といいます。)の利用の準備をしているとの報道がありました。
現時点では、事業再生ADRを行っている事業者は、「事業再生実務家協会」(JATP)だけです。同協会による事業再生ADRが実際に稼働したのは本年(平成21年)9月からとのことですから、今後、事業再生ADR手続の利用が増えていくことになるでしょう。
事業再生ADRの事業者は裁判所のような公的機関ではないので、事業再生ADRも「私的整理」の一類型と位置づけられます。すなわち、債権者集会で全債権者の同意を得なければ計画実施に至りません。ただし、かつての「私的整理ガイドライン」のようにメインバンクが主導して弁済計画を作成する手続ではありません。対象となる債権者(金融機関等の大口債権者)へ「一時停止通知」を発して債権回収や担保設定行為を禁止した上で、債務調整の協議への参加を呼びかけて、債権者会議で選任される「手続実施者」(事業再生実務家協会の会員から推薦される)のアドバイスを受けて債務者が再生計画案を策定します。そして、手続実施者が公正中立的な立場から債権者間の調整を行ったり再生計画案の調査報告書を提出します。このように手続に公的な色彩があるため、金融機関を中心とした手続対象債権者の同意が得やすいというメリットがあるのです。
一般の私的整理では、金融機関から弁済の猶予や債務免除を受けたくても、当事者間の話し合いになるため、なかなか金融機関の同意を受けられないのが実際です。
かといって、法的整理(民事再生など)を利用すると、金融機関以外の取引先も「債権者」として手続に加えなければなければならないため(当然、取引先の債権もカットされることになる)、取引先が離れていき、本業で利益をあげることが困難になり、事業再生の実をあげられなくなってしまうおそれがあります。
そこで、私的整理のメリット(金融機関等の主要債権者のみを相手として個別の取引はそのまま続けられる)を残しつつ、法的整理に近い手続の信頼性を付与することで金融機関等の主要債権者の同意を得やすくしようというのが、事業再生ADRです。
なお、事業再生実務家協会による事業再生ADRは、一部上場企業などの大手企業を主な対象としているそうで、中小・零細企業については「中小企業再生支援協議会」を利用してもらうということで「棲み分け」を図るようです。中小企業再生支援協議会は、ADRではありませんが、弁護士等により構成される第三者的性格のプロジェクトチームが再生計画の策定支援と金融機関への調整(債務圧縮の交渉など)を行っており、中小企業の利用が増加しています。